2009年05月14日

「住宅長寿命化大作戦 リクルート住宅総研の200年住宅論」

弊社がプロジェクトの運営補佐と調査データ編を担当させていただいた「住宅長寿命化大作戦 リクルート住宅総研の200年住宅論」(リクルート住宅総研編)がリリースされました。

「住宅長寿命化大作戦 リクルート住宅総研の200年住宅論」(リクルート住宅総研編)

住宅長寿命化大作戦表紙.jpg

報告書は、以下のサイトから全編260ページ分がPDFファイルでダウンロードできますので、ご興味がありましたらどうぞ。

リクルート住宅総研.net > 住宅長寿命化大作戦 リクルート住宅総研の200年住宅論
http://www.jresearch.net/house/jresearch/choujumyou/index.html

今回ご協力いただいた方々のクレジットは以下の通りです。
http://www.jresearch.net/house/jresearch/choujumyou/pdf/260_credit.pdf


実は、この報告書の表紙は、最後まで私が撮影した娘の日月(と妻)の写真が候補になっておりましたが、最終的に上のかっこいい写真の表紙に決まりました。
このプロジェクト打ち上げの謝恩食事会の時に、制作の楽人舎の和田さんとデザイナーのひぐちゆきこさんがわざわざ日月バージョンの表紙カバーを作って持って来ていただき、大感激しました(泣。

日月表紙.jpg

そして、何と何とチロルチョコも・・・(号泣。

チロルチョコ.jpg

ここまで気遣いのあふれた仕事にふれたのは久しぶりでした。
次もぜひこの人たちにお願いしよう!と本気で思いました(^-^)。

Posted by simfarm at 15:40 | Comments (0)

2007年02月21日

東浩紀 東工大講演資料

東浩紀氏は、東工大世界文明センター人文学院の特任教授なんですね。

「情報社会の思想」というお題の講演資料(pdf.)がUPされましたので、ご紹介しておきます。
http://www.hajou.org/ppt/titech20070219.pdf

これだけでもかなり面白いですが、やっぱ直接聴きたかったなあ~♪

Posted by simfarm at 06:41 | Comments (0)

2006年10月07日

「脳について解明されていること」レポート(最終回)

これで「脳について解明されていること」レポートも最終回となります。

改めて「この世界の全ては、私たちの脳が作り、脳が消費している」ということに気づかされます。
お気づきかと思いますが、「脳」に関する研究は非常に学際的で、どんどん新たな知見が出てくるエキサイティングな分野です。今後も新しい知見が加わりましたら、その都度UPしていきますのでお楽しみに!


最終回 その他脳についてわかっていること

■抽象的な言葉を生み出す言語
ウェルニケ野は頭頂用と側頭葉と後頭葉の中間当たりで左脳だけにあり、言葉の意味を理解する部位。ウェルニケ失語症とは見ている物は分かるが、言葉がうまく操れない症状。さらに、抽象的なことが考えられなくなってしまう。たとえば「何を飲みたい?」と訊ねても答えるには抽象的なことを考える必要があるので答えられない。「水を飲みたいですか?」と具体的に訊けばきちんと答えられる。つまり言語は、「宇宙の果てはどうなっているんだろうか」とか「自己とは何だろう」とか、そういう具体性から離れた抽象的なものや形而上学的なものを考えるのに重要な役割を果たす。《目からウロコp.182》《進化しすぎp.177》

■自分を維持する「変化盲(変化に気づかないという現象)」
人は「自己維持を守ろうとする本能」のため、最初に言った意見を曲げない。《脳はなにかとp.94》
ギャンブルでの縁起担ぎのような報酬に対する期待感である「期待効用」にも恒常性の維持が働く《脳はなにかとp.128》

■「赤色」は試合の勝率を上げる
色は生物の個体の間のコミュニケーションにおいて、重要なシグナルになっている。様々な生物において赤は、雄の相手に対する優位性を示す色であり、男性ホルモンの一種であるテストステロンのレベルの高さも表すことが知られている。人間においては、怒りは血流を増し皮膚を赤くする。その一方で恐怖を感じると逆に皮膚の色は青くなる。このため「赤」は対決的な状況において、相手に対する優位を表すシグナルになっている可能性がある。自分の対戦相手のユニフォームが赤だと、人間は無意識のうちに自分の方が劣位だと感じ、パフォーマンスが低下する可能性がある《脳の中p.196》《脳はなにかとp.113》

■脳の反応そのものが有効な市場指標
ニューロマーケティング。コカコーラとペプシをブランド名を知らずに飲んだときは「前頭前野」以外に反応は見られなかったが、ブランド名を明かされて飲んだときは「海馬」などの別の部位までが反応。コカコーラの広告戦略が成功していることを裏付ける。《脳はなにかとp.132》
究極的には、脳をスキャンすることにより、マーケティング業者は人の心が商品にどう反応するかをより的確に見極められようになるかもしれない。フォーカスグループ[市場調査のためにサンプリングされた消費者グループ]も役には立つが、消費者が実際にどう行動するかをつねに予測できるわけではない。しかし脳のスキャンを使えば、テストに協力する消費者が、意図的であれ意図せずにであれ、マーケティング担当者を誤った方向に導くことは、より困難になるかもしれない。《http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20050603303.html》

■経済行動における直感とドーパミン
商品やサービスを購入するといった経済行動において私たちはある決まったルールや方程式に従って行動しているのではない。しかし、私たちの実際の行動はある特定の価値のモデルに従って論理的に最適化されたものではない。まさに「直感」で商品を選択している。モノの値段は、あたかも客観的な価値の指標のようにも思われるが、一物一価が常に成り立つわけではない。実際にはマーケットの中でそれぞれの人が抱いた異なる価値が集計された需要と供給の関係から価格が決まる。水の価値にしても砂漠でのどを渇かしている人のコップ一杯の価値と都会の家でお風呂に入っている人とでは異なる。
このような主観的な効用について考えるためには、脳の中の感情のシステムの働き、とりわけドーパミンを放出する神経細胞の働きに着目すればよい。人間のほとんどの欲望は脳によって作り出され、脳によって消費される。
このような私たちの経済行動を理解する上での本質が不確実性にあることを示したのが、2002年にノーベル経済学賞を受賞したカーネマンらの「行動経済学」である。《脳と創造性p.96》

■自由意志と選択は「ゆらぎ」が決めていた
刺激が来たときのたまたま神経細胞がどんな状態だったかで行動が決まる。「ゆらぎ」が多い人ほどアイデアマンであるが、集中力には欠ける。《脳はなにかとp.146》

■メタファーの活用による消費者心理の表出化
メタファーを活用することで無意識にある消費者の重要な思考や感情を表層へ引っ張り出してくることができる。《心脳マーケp.60》
価値を選択する行為は感情と結びついている。感情がそれぞれの選択肢に価値を与え、それによって選択基準が設けられている。このプロセスはほとんど無意識であり、感情に訴えることのないアイデアは記憶されにくく、それゆえ後で思い出すこともない。《心脳マーケp.61》
思考や感情、学習の95%は無意識の心の中で起きている。《心脳マーケp.62》
したがって意識と無意識の両方を包含するメタファーを使うことが有効。《心脳マーケp.63》

■プラシーボ効果
消費者の無意識が商品の機能的便益以上のとても強力な経験を作り出す力を有する。たとえば自 分の好みのブランドであると知りながら商品を消費する場合と、ブラインドテストなどでそうとは知らずに消費する場合に、心の特別な働きがある。特にコモディティ商品のようなものに対してブランドやサービス提供者にロイヤルティを抱く《心脳マーケp.87》

■脳は「そこにない」情報を追加する
消費者自身がブランドに対する思考や感情を生みだし、自分にとって足りない情報を自分で埋め 合わせ、あたかも物理的に存在しているリアルなものとして受け止める。《心脳マーケp.92》

■脳は「そこにある」情報を捨象する
目に見えるはずの一つの認識がもう一方を抑圧する《心脳マーケp.93》

■恐がりはお酒に弱い
脳内で作用するFynという酵素を作る「Fyn遺伝子」。マウスのFyn遺伝子が機能しないようにすると、正常なマウスよりも電気ショックなどをより恐れるようになった。
このFyn遺伝子が機能しないマウス(恐がりマウス)と正常なマウスにアルコールを与えた。すると、正常なマウスは2~3分ほどで起き上がってくるのに対して、恐がりマウスは起き上がるまで10分もかかった。《ニュートンp.99》

■左右脳の個性
左脳は言語や四則計算を、右脳は立体的な図形に関することやイメージで物事を考える役割がある。たとえば、物質の落下やその落下点を考えるとき、左脳は計算で考える。落ち始めたときの速度や重力による加速度、空気抵抗などから、数式を使って算出する。右脳はイメージと感覚で考える。落ち始めをみれば、右脳にはだいたいの軌跡は見当が付く。これらを机上で考えるときも右脳なら数式ではなくグラフを使う。
また、空軍のパイロットは首をわずかに右に傾け、左視野を使って戦闘機を操縦している。一瞬で敵機と友軍期とを見分けなければならない。左視野-右脳(イメージ脳)組の方がこの識別が早い。
右脳と左脳が協力して問題解決に当たるときは、非常に創造性の高い仕事であり、感動的あるいは画期的な結果を生む。たとえば、詩を詠むとき心象風景や情感をイメージするのは右脳、これを受けて韻を踏んだりしながら言葉にするのは左脳の役目である。これがうまく機能して感動的な詩が生まれる。《目からウロコp.200》
以上の他、左右脳は次のような相違点がある。
①左脳は右半身を制御し、右脳は左半身を制御する。
②左脳は「逐次的に」処理し、右脳は「全体的、瞬時に」処理する
左脳は特に要素が一つひとつ順番に出てくるような、連続性のある物事の認識や、動作の順序をコントロールすることを得意としている。また、左脳は一続きになった一連の動作を制御するときにも活動する。左脳によって行われる連続性のある活動としては、話す、他人の言葉を理解する、読む、書くなどの言語活動がある。
対照的に右脳は多くのものを一度にみる、幾何学的な形のそれぞれの部分をみてその意味を理解する、などの活動を専門的に扱う。だから表情を読み取るときには右脳が特に役立つ。
③左脳は「文」を右脳は「文脈」の処理を得意とする
左脳は「何が」話されたかを扱い、右脳は「どのように」話されたか、つまり眼差しや表情やイントネーションによってもたらせる「言葉に寄らない感情的な面」に重点を置いている。
④左脳は「詳細を分析」し、右脳は「大きな全体像」としてとらえる
一般的に左脳は情報の分析を行い、右脳は統合を得意とする。右脳はバラバラの要素を集め、そこから物事の全体像を認識する能力に特に優れている。
《ハイコンセプトp.49》


■性別と脳
よく言われるのが男性が空間認知能力に優れ、女性が言語能力に優れている。男性の脳と女性の脳ではハード自体にいくつかの違いがある。まず大きさは男性の方が平均100グラム大きい。これは体重差であると考えられる。
構造や形をみると、左右の脳をつなぐ脳梁の膨大部が女性の方がずっと太い。したがい右脳と左脳の連絡は女性の方がよいと考えられている。女性脳の脳下垂体は、周期的に生殖腺刺激ホルモンを出すように指令する。これにより月経がある。
視床下部にあるINAH3(前視床下部第三間質核)という神経は男性の方が女性の2倍以上大きい。ここは男性ホルモンであるアンドロゲンに非常に良く反応する部分で、男性の性行動や低い声、体毛の濃さなどに関わりがある。
言語については女性の場合、左脳を基本としながらも右脳でも言語を操れる人が多い。これは女性の脳梁が太く、右脳と左脳が近しいことに由来すると考えられる。実際、脳梁が太い女性ほど言語を流ちょうに操れる。《目からウロコp.206》
海馬についても男女による解剖学的な違いやストレスに対する反応に性差があることが知られている。海馬は記憶の保存や空間的な位置関係の把握にきわめて重要な構造。海馬は男性よりも女性の方が大きく、こうした解剖学的な違いが、目的地にたどり着く能力にも関係している可能性がある。男性は空間的な位置関係や方角、距離を見積もって進む「推測航法」の能力にたけており、女性は目印を頼りに目的地にたどり着くことが多いことが知られている。また、ラットを使っての実験では、雌のラットの海馬は急激なストレスに直面すると働きが悪くなることがあるが、慢性的なストレスにはむしろ雄よりも抵抗力がある。《サイエンスp.20》

Posted by simfarm at 08:46 | Comments (1)

2006年10月05日

「脳について解明されていること」レポート(第6回)

昨日このレポートを書いたもらったOさんから直接レクチャーを受ける約束をしていたのですが、すっかり忘れておりました。
最近ダイアリーのメインを手帳からgoogleカレンダーに変えたのですが、その際にこのアポを転記してなかったのが原因です。とはいえ、何か脳に引っかかっていればこんなことにならなかったのに・・・。これってもしかして初期の認知症?(怖

いずれにしましても、Oさんごめんなさい<(__)>

さて、今回は茂木さんを一躍有名にした「クオリア」という概念にについてです。

第6回 クオリアについて

■五感とクオリア
<視覚>
その情報が自分にとって価値がある・ないで、同じ物を見ても活動が違う。これは自分が過去に得したか損したかという個人の経験に拠る。《脳はなにかとp.42》
視神経は半分だけが交叉(半交叉)している。右目についても左目についても、左側の視野は脳の右半球で、右側の視野は脳の左側がカバーしている。したがい、右脳の視野角がダメになった場合、視野の左側が見えなくなる。こういう現象を「盲視」という。
視神経は視床で乗り換えられる(進化的に新しいので「新しい経路」と呼ぶ)が、それが枝分かれして、脳の真ん中にある「上丘」という場所(「旧い経路」と呼ばれる)にも運ばれる。この盲視の患者は、原始的で単純な上丘で処理され、上述の判断をしている。健常者の場合も、飛んでくる物体をとっさによけるための視覚情報は、旧い経路から脳に入る。テニスのサーブなどの剛速球を打ち返すプロの選手は上丘で判断している。《進化しすぎp.148》《目からウロコp.56》

<聴覚>
その情報が自分にとって価値がある・ないで、同じ物を見ても活動が違う。これは自分が過去に得した音の信号が鼓膜をふるわせ、蝸牛によって電気信号に変えられる。信号は延髄、橋、中脳、視床と流れ、聴覚野へと達する。音の大きさや音の発する方向の判断などは、聴覚野の働き。言語に限っては、さらに言語野へとすすみ、その内容が理解される。《目からウロコp.160》
聴覚野は音のヘルツ数に従って聴覚野の働く場所が違う。音の低い方から高い方へと反応する場所がきれいに分かれている。《進化しすぎp.46》

<嗅覚>
嗅覚は空気中の分子の刺激によって呼び起こされるが、人間が匂いとして感知できる分子は3000~1万種である。一方、空気中に漂っている分子は40万種以上といわれている。ただし、フェロモンのように、意識が匂いとして感じることはないが、脳はきちんと感知し、人の判断に様々な影響を与える物質もある。《目からウロコp.160》
人は生活の中では「匂いを嗅ぐ」という行為はさほど重要な位置を占めていない。多くの動物は食べ物を見つけたり、腐っているかどうかを判断するなど生死に直接結びつくとともに、犬や猫のように匂いによって後尾の相手を決めたり縄張りを確認したりするものもいる。
嗅覚からの刺激は視床下部や記憶に関係する海馬にダイレクトに伝えられるので、記憶に結びつきやすい。香水に匂いで昔の恋人を思い出したり、たき火の匂いで懐かしさを感じたりするのもそのため。また、視床下部や大脳辺縁系は、情動に深く関係しているため、心地よい香りを嗅げば、自然と気持ちが癒される。《面白いp.76》

<味覚>
味覚は化学物質の分子に感覚器である舌が触れて感知する。味には甘み、塩味、酸味、苦味、うま味の5基本味がある。味覚は味細胞で電気信号に変えられ、味覚野に達する。味覚野は前頭葉の体性感覚野のすぐ下の領域にある。《目からウロコp.132、161》
味覚野は先入観によって活動を変える。特に「不快」なことに関しては強く反応。《脳はなにかとp.46》
味覚野の実験では「これは美味しそうだ」と思うときと「不味そうだ」と思うときでは、情報が大脳に入ってくる開始点のところで、すでに情報にバイアスがかかっている《脳はなにかとp.41》
また、味覚は扁桃体にも伝わることが分かっている。扁桃体は原始的な快・不快な感情を呼び起こす部位であり、食べ物が人間に理屈抜きの大きな快楽をもたらしたり、逆に不快や嫌悪を感じさせたりするのはこのためでもある。《目からウロコp.161》

<皮膚感覚(体性感覚)>
皮膚感覚には、触られた感覚である触覚、押された感覚である圧覚のほか、痛みを感じる痛覚、熱さを感じる温覚、冷たさを感じる冷覚がある。これらの感覚器によってとらえられた情報は、電気信号に変えられ脊髄や視床を経由し、体性感覚野へ送られる。そして脳が感覚を認識する。。《目からウロコp.164》

<クオリア>
「トマトジュースの鮮やかな赤」や「バイオリンの豊かな音色」など、ありありと鮮明に心に立ち上がってくる感覚、それぞれのものにそれぞれ固有な感覚をクオリアという。クオリアとは抽象的なものであり、抽象的なものは言葉が生み出したもの。クオリアは大脳皮質で生まれる。《目からウロコp.166》《進化しすぎp.192》

■欲望とクオリア
自分がまだ経験したことのないクオリア、とりわけ数字で表すことのできないクオリアについて、それがどのようなものであるかを類推することは一般的に難しい。珍味であれば、実際に味わうまでは、それがどんなものかは分からない。
人間は体験していない未知のクオリアにあこがれ、それを強く欲望すると言うところがある。人間の欲望は衣食住といった基本的な生命維持に関わるものや、性に関するものなど、他の動物と共通のものもある。一方で、大脳皮質がここまで発達してしまった人間にとって、新しいクオリアを求めるという欲望が、欲望全体の中でもかなりの部分を占めている。
人間が新しいものを好むという傾向を指して「ネオフィリア」という。クオリア体験におけるネオフィリアこそ、人間という存在の最大の特徴の一つである。《からくりp.231》

■口コミとクオリア
クオリアは、それを実際に体験しなければ類推がきかないものであるからこそ、クオリアをすでに感じてしまった人と、まだ感じていない人の間には断絶がある。その断絶を乗り越えようとして、人はコミュニケーションを試みる。たとえば映画から受けた感銘であるとか、一言では片付けられないクオリア体験を説明しようとするときに、人は雄弁になってしまう。だからこそ、「口コミ」によって今までなかった新しい商品なりサービスが流行る現象があるのだろう。「口コミ」は未知のクオリアが人々の間のコミュニケーションを通して次第に社会の中で知られていく過程である。《からくりp.233》

Posted by simfarm at 09:09 | Comments (1)

2006年10月04日

「脳について解明されていること」レポート(第5回)

このレポートも今回を含めてあと3回となりました。
mixiでは、rascalさんから
「SIM(私のハンドルネーム)さん。 このまとめレポート最高にいいです。」
とお褒めの言葉をいただいたので、気分良く続けます(^-^)。今回はとても短いですよ。

ちなみに、私は脳についてはいくつかの研究会に参加しています。

「脳を活かす研究会」
http://www.cns.atr.jp/nou-ikasu/

「ブレインコミュニケーション研究会」
http://www.ieice.org/cs/brain/

いずれも、これからイベントがありますので、本格的に研究したい方はご一緒しませんか?(「脳を活かす研究会」は京都で3日間のイベントがあります)


第5回 意識と無意識

■意識の定義
意識は「表現の選択」「ワーキングメモリ(短期記憶)」「可塑性(過去の記憶)」から出来ている。《進化しすぎp.170》

■表現の選択
ハブは温かいもの(赤外線)を感じるとそれだけでガブッとかみつく。蚊は温かいものや二酸化炭素に反応して勝手に寄っていって刺す。カエルは目の前を飛んでいる虫(目の前で動いているものなら何でも)食べようとする。これは無意識であり、反射に近い。「意識」とは自分が歩こうとしても良いし、立ち止まろうとしても良い。それは自分が行動の表現を選択することである。《進化しすぎp.163》

■ワーキングメモリ(短期記憶)
典型例は言葉。たとえば「ミカン」「トカゲ」では、真ん中の「カ」が共通の文字。「カ」の前後の言葉を覚えていなかったら意味が分からなくなる。だから意識には少なくとも短い時間、情報を脳に取っておく必要があり「短期記憶」が働いている。
「外界から入力する情報」「予定記憶」「過去の記憶」などから、「選択的注意」によって選ばれた情報だけを一時的に保持しつつ、それらを組み合わせて適切な行動を導く。《進化しすぎp.168》《ニュートンp.142》

■可塑性(過去の記憶)
過去の状態によって脳の状態が変わること。一度ひどい思いをしたから、そういうことはもうしないとか、そういう脳の何らかの状態が変わること。たとえば目の前に二つの道があるときに片方の道にはヘビがたくさんいて危ないぞというのをあるとき知ったとする。最初の選択はランダムだったかもしれないが、「こっちにはヘビがいる、向こうにはいない」というのが分かったときに、ヘビがいる方にはいかない。意識は選択できるための根拠をもち、その根拠は必ず「過去の記憶」に存在する。
脳は経験を価値判断の基準に仕立てる。《進化しすぎp.169》

■「いま」は過去
人間の脳にとっては100分の1秒より小さい時間は同時。人間の脳にとっての時間は、数十ミリ秒おきにコマ送り、つまり量子的になっている。それが無意識の作用、つまり脳の働きによってスムーズにつながって見える。目から入った情報は視覚野で解析される。そのとき脳は、形、色、動きを分析するが、これは同時にはやっていない。たとえばリンゴが転がっている場合、一番先に気づくのは色。その次に形。そして、動き。「色」に気づいてから「転がっている」と気づくまでの時間は早くても70ミリ秒ぐらいかかる。本当は「今目の前に転がっている物体があるんだけど、それはちょっと前にはリンゴであって、その直前には赤い色をしていました。でも今はどうかは分かりません!」というのが正解。したがって「いま」は過去である。《進化しすぎp.140》

■目があるから世界が出来た
人間の心や意識はすべて脳が解釈している。たとえば人間が識別できる色の数は700万色であり、光の三原色に対応した色細胞が網膜にある。赤・青・緑という電磁波の560ナノメートル、530ナノメートル、450ナノメートルという波長の三色しか見えないから世界がこういうふうにしか見えていない。たとえば、もっと長い波長のラジオ波が見えたら見えるものがゆがんでしまう。人間の目は、世の中に存在する電磁波の、ほんの限られた波長しか感知できないので、見えている世界が全てではない。したがって脳が(人間に固有な特有の)世界を創りあげている。《進化しすぎp.143》

Posted by simfarm at 04:56 | Comments (0)

2006年10月03日

「脳について解明されていること」レポート(第4回)

もう脱落気味の人が70%くらいいると思いますが、まだまだ続きます(^-^)。
今回は「記憶」に関して。大変興味深い知見が多いです。

第4回 記憶が蓄積されるまで

■記憶の種類(内容で分類)
記憶の内容には次の「陳述記憶」と「非陳述記憶」の二種類がある。
非陳述記憶には体を使って覚える「手続き記憶」と自分の意識とは関係なく覚えている「プライミング記憶」がある。手続き記憶とは、いわゆる「体で覚える記憶」で、自転車の乗り方とか、スキーの滑り方が代表的。一度覚えてしまうと忘れないことが特徴。プライミング記憶とは、サブリミナル効果のように、先に取り入れた情報に無意識に作用を及ぼす現象。また、記憶を作る「海馬」を失っても問題なく記憶する。これらは小脳で記憶される。
陳述的記憶とは「頭で覚える記憶」であり、言葉や絵などにして示すことが出来る記憶。陳述的記憶は、さらに「エピソード記憶」と「意味記憶」に分けることが出来る。「エピソード記憶」は「~を覚えていますか?」という質問の答えになる思い出に関するもの。「意味記憶」は「~を知っていますか?」という質問の答えになる知識に関するもの。《『目からウロコの脳科学』(富永裕久著/PHPエディターズグループ )p.168》《『面白いほどよくわかる脳のしくみ』(高島明彦/日本文芸社)p.124~137》《『ニュートンここまで解明された脳と心のしくみ』(ニュートンプレス)p138》


■記憶の種類(期間で分類)
期間で分類すると次の「感覚記憶」「短期記憶」「近時記憶」「長期記憶」の四種類がある。
<感覚記憶>
脳内のニューロンが一瞬だけ結びつく。目や耳といった感覚器がとらえた外界の様子をごく一瞬保持。たとえば、紙に書かれている数字をぱっと見ると人は反射的にそれを覚える。このとき脳内では複数のニューロンが連結しパターンをつくる。しかし、すぐに失われる。その時間は視覚で1秒弱、聴覚で4秒弱といわれる。テレビの画像を連続した動きとして認識できるのは感覚記憶のおかげ。
また、「とうきょう」という音声を聞いて、「東京」と認識できるのも感覚記憶の働き。「きょう」を聞いたとき、その前の「とう」を忘れていては、「東京」を認識することはできない。

<短期記憶>
短期記憶は、感覚記憶より長く覚えていられるが、それでも20秒から1分程度。視覚の感覚記憶によって一瞬覚えた数字が、強い興味を引く情報(好きな異性の電話番号など)だった場合、覚えようという努力により「短期記憶」となる。
また、会話中の「東京」という話題は、その後「短期記憶」として保持される。

<近時記憶>
数日間覚えていられるような記憶が「近時記憶」。今日の昼食に焼き魚を食べたとか、明日は10時から会議があるとか。「海馬」が短期記憶を集め、近時記憶にする。

<長期記憶>
忘れることがないのが長期記憶。近時記憶を何度も何度も思い返すと、ニューロンの結合部であるシナプスで、ある種のタンパク質がつくられ、結びつきが固定化される。つまり、いつも同じパターンで活動するニューロンの集団が出来る。
近時記憶から長期記憶として脳に定着するまでには約2年かかると推測されている。《目からウロコp.170~173》


■エピソード記憶の蓄積
<短期記憶→近時記憶>
「海馬」が視覚情報、聴覚情報、皮膚感覚の情報というようにバラバラである短期記憶を集めて1つのエピソードにする。
たとえば、「雲取山に登って、標高2017mという標識と、紅葉の景色を眺めながら、おにぎりを食べた」という経験の場合、足腰の疲労感、標識の2017mの文字、紅葉の景色、おにぎりの味と言った短期記憶は、大脳皮質の別々の場所で処理される。海馬でこれらが集まり、統合される。短期記憶は海馬によって結びつけられるため、忘れにくい。これが近時記憶である。

<近時記憶→長期記憶>
海馬が近時記憶の中でも印象的なものに限って、睡眠中に勝手に何度もリプレイする。リプレイによって活動電位が起こり、繰り返されることで、いつも同じパターンで活動するニューロンの集合が生まれる。出来上がるまでに2年かかる。
また、こういうエピソードの経験時は、多くの場合感情の高ぶりを伴う。これで、神経伝達物質が多く分泌されニューロンが活動電位(ニューロン内を走る電気信号)を起こす確率が高まる。よって、ニューロンのパターンがより強くつくられ。記憶に残りやすい。《目からウロコp.174》


■意味記憶とエピソード記憶の関係
「1192年に鎌倉幕府は成立し・・・」などの自分の体験とは関係ない長期記憶で、何らかのきっかけがないと思い出すことが出来ない。しかし、意味記憶は自分の経験を交えることでエピソード記憶に変わり、反対に放っておくとエピソード記憶は簡単に意味記憶にすり替わる。たとえば歴史を記憶する際にはストーリーや人物の心の動きを頭の中でイメージしたり、時折他人に説明したりすれば記憶に定着させやすい。《よくわかる脳p.134》


■エピソード記憶の活用
ザルトマンは「一度貯蔵されたエングラム(脳細胞上で電気化学的に刻み込まれたもの)は、何らかのキュー(合図)あるいは刺激を受けることで活性化する」とし、「こうした刺激こそ、消費者の購買意図につながるような記憶を喚起する手段」としている。さらに「エングラムやキューに加え、消費者が抱くゴール(目標や目的)も記憶に影響を与えており、人々がどのようなキューに気づくか、その結果、どのエングラムが活性化し、彼らの意識に登るかに影響を与える。」《『心脳マーケティング』(ジェラルド・ザルトマン/ダイヤモンド社)p.200~202》


■記憶のゆがみ
人間が感じる光の色の感覚や音の高低の感覚は脳が創造している。その感覚も受けた人の心理状 態や判断で大きく変わる。興味のあることははっきりと、かつ誇張されて脳に刻まれる。逆に見たくないことやいやなことは都合の良いようにゆがめられて記憶される。
さらに海馬が記憶をリプレイするときにも記憶の改変が行われる。様々な記憶の断片がつなぎ合わされたり、空白部分を何かで埋めたり、空想が入り込んだりして何度も海馬によってリプレイされて本当の記憶になる。これを利用し、消費者とって個人的な重要性の高い特徴を強調することで、記憶の長期記憶化を促進できる。
また、記憶の改変には2種類あり、過去の経験について消費者に語ることで、消費者がその製品や買い物について思い出す経験内容が実際の経験と異なるものにする「バックワード・フレーミング」と、将来起こりうる経験を消費者に抱かせる「フォーワード・フレーミング」がある。これらを利用して消費者に対し、実際にはなかった事実を記憶として植え付けることが可能である。《目からウロコp.152, 176》《心脳マーケp.212~218》


■ど忘れを取り戻す「プライミング」
記憶を日々戻すきっかけ。ど忘れの際は「ど忘れする前と似た状況を作る」ことが最適なプライミング。ただし、ど忘れは本当に忘れているのではない。確かに答えは出てこないけれども、その一方で正解をちゃんと知っている。したがい、ど忘れは病気の「認知症」とは違い、「健忘症」である。《『脳はなにかと言い訳する』(池谷裕二/祥伝社)p.82》


■ど忘れとは
記憶を最終的に処理する部位は脳の大脳皮質の側頭葉にある。人生の様々な体験の痕跡はそこに収納されていく。その記憶を欲しいときに前頭葉から側頭葉に「こういう情報が欲しい」というリクエストがいく。そのリクエストに対してすぐに返答すれば「思い出す」ことになるのだが、返答がなかなか戻ってこないときいわゆる「ど忘れ」の状態になる。
「ど忘れ」では思い出すことが出来ないにもかかわらず、絶対自分は知っているはずという認識があり、これを「FOK(Feeling of Knowing)=既知感」と呼ぶ。このFOKが成立し、と側頭葉が答えを返してこないとき「ど忘れ」となる。ペンローズは、この「ど忘れ」の状態と創造性とひらめきを要求している脳の状態が非常に似ていると言っている。《『ひらめき脳』(茂木健一郎/新潮社)p.66》


■ど忘れとひらめき
前頭葉に「今どれくらい脳が努力をしているか」という苦しさの度合いをモニターしている部位があり、「ど忘れ」の時苦しい状態になる。他の動きを抑制するために、わざわざ苦しさを生み出している可能性もあり、この苦しさこそがひらめきを生むサインの可能性がある。「危機(emergency)」こそが「創発(emergence)」である。
ひらめくためには「ど忘れ」同様、記憶の喚起における前頭葉と側頭葉の関係性が重要であり、記憶を司る側頭葉がその準備である「学習」をしていなくてはならない。暗記や記憶などの学習により、記憶のアーカイブが蓄えられ、それをもとにひらめきが生まれるのである。《ひらめきp.72》


■ひらめきと感情・記憶
強烈な感情の働きが起こると、それだけ記憶への定着が強くなる。何かがひらめいたとき、神経細胞は一斉に活動を始める。ひらめいた瞬間の脳の目的はひらめいたそのことを、確実に記憶に定着させること。その瞬間を逃さないため、脳の神経細胞は0.1秒ぐらいの時間で一斉に活動(同時発火)する。脳の学習は神経細胞同士をつなぐシナプスが強められることを意味する。そのためにはシナプスの両側の神経細胞が同時に活動する必要があり、これを「ヘッブの法則」という。
感情に関わる脳の中枢である「扁桃体」は、あるものが「好き」「キライ」といった情報を収納し、処理している。扁桃体を中心とする脳の情動系の機能は、大脳皮質に比べて立ち上がりが少し早い。情動系の処理は粗くて早く、大脳皮質は遅くて細かい。長いひものようなものを見つけると、その瞬間に「ヘビかもしれない」と扁桃体が先回り処理をする。さらに、扁桃体は知覚にある海馬の活動に影響を与える。強く感情を喚起し、扁桃体を活性化させた出来事は、海馬をも活性化させ記憶に定着化しやすくなる。《ひらめきp.93》
すなわち最終的には、大脳皮質の側頭葉に神経細胞間でのシナプス結合のパターンとして書き込まれる。《ひらめきp.120》
海馬が扁桃体を中心とする感情のシステムの影響を受けると言うことで、一つ一つの体験が記憶されるかが決まる。お笑いコンビ「くりいむしちゅー」の上田晋也氏は頭、額、眉毛、目、鼻などの身体の部位に痛みを感じることを想像しながら記憶する。これを「トラウマ記憶術」と呼んでいる。たとえば、「本、時計、灰皿、コップ」を覚えるときには、「本が頭にガツーン!」「時計が額にゴーン!」と当たるところを想像しながら覚えるというのである。痛みを想像することが、記憶に影響を与える脳の感情のシステムを活性化させる上で役に立つというのはありそうである。《『脳の中の人生』(茂木健一郎/中央公論新社)p.57》

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2006年10月02日

「脳について解明されていること」レポート(第3回)

今回は短いです(^-^)。

第3回 脳幹や小脳に関して分かっていること

■脳幹・小脳・大脳基底核の役割
小脳は、外の世界が変化すると脳幹や脊髄の働き方を少し変える。大脳基底核では、視覚や嗅覚など様々な刺激を受けて、同時に起きている脳幹や脊髄の働きを整理して、状況に合わせてもっとも適切な行動を取るように調整している。
大脳基底核によって調節された後で実際に行われた行動が理にかなっているかを大脳辺縁系がチェックしている。つまり、動物が生存して子孫を残していくという、動物にとっての至上命題にかなっているかどうかを判断して、脳幹や脊髄の働きを変えていく。ちなみに、脳幹と脊髄と小脳、大脳基底核、大脳辺縁系を組み合わせると、は虫類までの行動はすべて説明できる。《『ニュートンここまで解明された脳と心のしくみ』(ニュートンプレス)p.116, 117》

■小脳による記憶(手続き記憶)
スキーや自転車のように体で覚える記憶(手続き記憶)は、小脳で記憶される。海馬の記憶が「書き込み方式」とすれば、小脳の記憶は「消去法」によって行われる。運動にミスが生じると、無駄な運動を導いていくような小脳のシナプスが回路から消される。そして、残ったシナプスだけが熟練した動きを実現する。《ニュートンp.138》
さらに小脳は運動だけではなく、思考の熟練も担うという新しい考え方がある。小脳は、学習機能によってほかの回路の働きをコピーできる能力を持っている。たとえば、大脳を扱う思考は意識にのぼるが、3×3の計算のように学習が進むと考えなくても答えが勝手に出てくるような無意識の世界で展開される能力。この能力を使えば、小脳は大脳の思考回路をコピーできる可能性がある。《ニュートンp.138》

■「予測」と「回避」で軽減されるストレスをコントロールする視床下部
ストレスには二種類有り、主観的な(自覚される)ストレスと体性的な(無意識に体が感じている)ストレスがある。ストレスに対する体の反応は「視床下部」「下垂体」「副腎」を軸に全身の連鎖応答で生じる。《『脳はなにかと言い訳する』(池谷裕二/祥伝社)p.66》
アルコールとストレスの関係について上山敬司氏は「zif268」というストレス遺伝子に着目。アルコールを飲んでストレスを受けても大脳皮質の「zif268」の活動は生じなかったが、「視床下部」の「zif268」は通常通り活性化した。視床下部は、「脳や体のストレスをコントロールする」重要な場所。したがい、アルコールを飲んでもストレスは発散されない。《脳はなにかとp.68》
またスポーツをしてもストレスは解消されないが、一種の逃げ道を作ることで、間接的にストレスを減らしている。《脳はなにかとp.70》
扁桃体で感覚情報がストレッサー(ストレス反応を引き起こす出来事)と判断された場合、その情報が視床下部に伝えられると、視床下部が自律神経系を活性化したり、ホルモンを出すように指令を出したりする。《ニュートンp.102》

■食欲を促進する視床下部
体に脂肪が多いときはタンパク質「レプチン」の刺激により「これ以上は食べないように」と脳に指令 を送るが、レプチンが欠損すると過食傾向になり肥満になる。肥満になると「レプチン耐性」が出来てしまい、肥満を解消するのは難しくなる。
マリファナに含まれている食欲を促進する「テトラヒドロカンナビノイド」に似ている脳内ホルモン「エンドカンナビノイド」は過食を誘発し、脂肪の蓄積を促進する。エンドカンナビノイド阻害薬が肥満解消薬として注目されている。《脳はなにかとp.302》

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2006年10月01日

「脳について解明されていること」レポート(第2回)

第2回目は「大脳」です。「大脳」は面白いですよ。より興味のある方は、参考文献をご覧になってください。どの本も読んでおいて損はないですから(^-^)。

第2回 大脳に関して分かっていること

■大脳皮質の機能を抑制するアルコール
大脳皮質の働きの一つは「理性」を生むことである。理性の働きは本能を抑制することである。理性は、利己欲や性欲などを抑制することで、ヒトを社会的な動物に作りあげる。大脳皮質は、アルコールによって比較的効率よく抑制される。飲むと笑い上戸になったり、泣き上戸になったりなど、隠れていた本能や本性が表れてきたと見なすことが出来る。《『脳はなにかと言い訳する』(池谷裕二/祥伝社)p.80》

■他人の痛みを感知する「同情ニューロン」
ロンドン大学のシンガー博士は、苦痛を感じるときの脳の反応の実験で、「視床」や「体性感覚野」など古くから「痛覚の通り道」といわれていた部位だけではなく、「帯状野」や「島皮質」と呼ばれる場所も同時に反応することを発見した。帯状野や島皮質は他人が苦しんでいるのをみて「痛いだろうなあ」とゾワゾワする感覚を生み出している神経。これを「同情ニューロン」と名付けた。これは相手が何をしているかを見て反応する「ミラーニューロン」の延長線上にある。《脳はなにかとp.133》

■前頭葉にあるアラームセンターと司令塔
前頭葉には「ACC(Anterior Cingulate Cortex)」(前部帯状回)という部位があり、脳における「アラームセンター」の役割を果たす。たとえば、痛みを感じたときなど何か尋常でないことが起こると、このACCが最初に反応し活動する。するとその情報は前頭葉側にある「LPFC(Lateral Prefrontal Cortex)」(外側前頭前野)というところに伝わる。このLPFCが脳内の神経細胞の活動のメリハリをつける働きをし、かつACCとの連係プレーでひらめきの種がないか、常に見張っている。《『ひらめき脳』(茂木健一郎/新潮社)p.82》

■前頭葉とモチベーション
我々の行動の基本は、「目標」と「報酬への期待」を関連付けるモチベーションによる。この時、目標を達成すればどれだけ報酬が得られるかという「期待の大きさ」は脳内のどこでどのように表現されているのだろうか?サルに「数段階の試行を正解すると初めて報酬が貰える」という課題を課した。何回正解すると報酬が貰えるかの手がかりを示しながらサルに課題を遂行させると、エラー率は報酬が近づくにつれて小さくなる。これは報酬がもうすぐ貰えるという期待が大きくなっていることを表す。この時、前頭葉内側部の前帯状皮質に報酬への期待の大きさに比例して、反応が強くなる神経細胞がある。《http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2002/pr20020530/pr20020530.html
前頭葉は報酬への期待と仕事の精度の関係に関与。仕事の正確度を高めたければ、多くの行程をひとまとめにせず、ステップに分け、そのたびに報酬を与える。すなわち、大きな仕事を成し遂げるためには、最終目標以外にも、小さな目標、達成可能な目標を随時掲げていくことが大切。《脳はなにかとp.54~58》
モチベーションの維持には、外発的動機付けによって脳の外から動機を与える環境主導型のやり方が一つ。もう一つのやり方は体を実際に動かすことで、やる気がなくても、脳が次第に活性化し、やる気が出てのめり込む「作業興奮」という状態を作る体主導型のやり方がある。《脳はなにかとp.58》

■報酬系とモチベーション
報酬系とは、ヒト・動物の脳において、欲求が満たされたとき、あるいは満たされることが分かったときに活性化し、その個体に快の感覚を与える神経系のことである。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A0%B1%E9%85%AC%E7%B3%BB
中脳の腹側被蓋野などの報酬系という脳部位には、快楽を生み出す神経伝達物質ドーパミンが大量にある。腹側被蓋野に電極を刺したネズミは飲まず食わずで快楽を求める。恋愛感情もこの一つと見られている。《脳はなにかとp.61》
ネズミが「えさを食べた」という情報が腹側被蓋野のニューロンに伝えられると、さらにその情報が軸索を伝わっていく。この軸索は、前脳の「側坐核」というニューロンか集まっている場所までのびている。この軸索の末端まで情報が伝わると、神経伝達物質のドーパミンが放出する。すると、そのドーパミンを側坐核のニューロンが受け取り、快感が得られる。《『ニュートンここまで解明された脳と心のしくみ』(ニュートンプレス)p.97》
報酬系の働きは、学習や環境への適応において重要な役割を果たしている。たとえば我々は、「この仕事を完了したらボーナスがもらえる」などと、長期的な報酬を予測することで、疲労や空腹といった短期的欲求を抑えて仕事を優先できる。しかし当てにしていたボーナスがカットされると、報酬系が抑制され、不快さを感じるのである。また、報酬系神経系の働きが、大脳皮質の可塑性に影響するという報告もあり、学習においても同様に報酬系が重要である。「誉めて育てる」という言葉はこのことを言い得ている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A0%B1%E9%85%AC%E7%B3%BB

■報酬から生まれる創造
恋愛などによって脳内に大量に分泌されるドーパミンは、快楽を与えるとともに意欲や想像力にも深く関係している。ドーパミンの分泌によって刺激を受け、活性化された前頭葉は、性欲や食欲を満たすための行動を欲するとともに、好奇心と意欲を高め、何かを創造しようという方向へ向かう。恋愛中に表情がいきいきと輝いて見えるのは、化粧をしたりファッションに気遣うほか、実はこうした内面の変化も大きく影響している。
通常、脳の神経細胞には過剰なホルモンを受け付けないようオートレセプターといわれる機能が働いている。しかし、前頭連合野に伸びているA10神経という快楽にもっとも深く関与しているこのまわりに限っては、オートレセプターの機能が壊れてしまっている。したがい、過剰にドーパミンが分泌されることになり、人間の脳はどんどん快楽で活性化させられる。《『面白いほどよくわかる脳のしくみ』(高島明彦/日本文芸社)p.144》
他人に注意するのが好きな人がいる。科学は、他人に注意するという人間の行動に、「利他行動」という視点からアプローチする。必ずしも自分の得にならない、むしろ損になるかもしれないのに、他人の利益のために敢えてする、というのが利他行動である。生物は基本的に自己保存の本能に従って行動している。生物学的には利他行動を取ることが、巡り巡ってそのような行動を取る遺伝子の生存、および子孫への継承に有利に働くなら、そのような行動は生き残るというふうに考える。
一方、脳科学の立場では別の視点から解釈が提案されている。利他行動は自分のための行動であるという解釈である。注意するときに、どうやら人間の脳は「快感」を感じているらしい。《『脳の中の人生』(茂木健一郎/中央公論新社)p.94》

■未来予測から不安が生まれる
前頭葉の右半分をなくすと悩みが消える。悩まなくなると社会に適応しながら生活できない。悩まない人たちは、記憶力が低下する。そもそも記憶というのは、未来の自分のためにある。未来への計画性のないヒトにとっては、記憶は不要である。不安は生命力の肥やしになっていて、生活基準の重要なカテゴリーである。《脳はなにかとp.265》

■不確実性とひらめき
ある程度は予測できるが、どうなるか分からない側面もあるという性質を「偶有性」と呼ぶ。人間の脳において、この不確実であることに対処するため最も重要な働きをするのは、感情である。たとえば試験前にうまくいくかどうか分からないと不安になったり、危険に直面するとテンションが上がったりする。すなわち不確実性は感情を活性化させる。
感情の中枢は、「は虫類の脳」と言われる大脳辺縁系であり、理性を司る大脳皮質が感情を抑えることによって人間は社会的生活を送れると考えられてきた。しかし、最近では、感情は理性にコントロールされているのではなく、むしろ理性を支えていると考えられるようになった。
人生は偶有性に満ちており、正解は何も保証されていない。いつか決断し行動にしなくてはならない。そのときに背中を押す直感を支えるのが、脳における感情のシステムである。ひらめきも不確実性という背景から生まれる。全てが確定した状況にあるならば、ひらめきは不要である。《ひらめきp.139》

■不確実性と報酬
飲料が並んでいる棚の前で、消費者がどれを買うか選択するのに費やす時間は約2秒。何を買ったらいいのか本当は正確に分からない。消費行動はそのような不確実性の海野中で揺れ動き、メーカーの業績や経済構造にまで影響している。
適切な文脈における不確実性の下での人々の判断、行動は、それ自体が脳にとってうれしいこと(報酬)になりうる、という発見があった。人間とはまさに、未知の可能性に賭けずにはいられない動物。《ひらめきp.148》
ドーパミン細胞の活動は50%の確率で報酬がもらえるときに、特徴的な活動がみられることがわかった。すなわち、刺激が提示されてから報酬が与えられるまで、ドーパミン細胞がだらだらと継続的な活動をすることがわかった。《『脳と創造性』(茂木健一郎/PHP研究所)p.85》

■報酬としてのアイ・コンタクト
他人とのアイ・コンタクトが脳に報酬を与えるという研究の発表があった。ただし、1分も2分も見続けられていたら、むしろ不安や不気味に感じる。相手の方を見たときに、相手もこちらを見ていたり、別の時には目を伏せていたりとか、そのような偶有性に満ちたアイ・コンタクトが脳の報酬となり、感情を活性化させる。《ひらめきp.156》

■セレンディピティ
セレンディピティとは、「思わぬ幸運に偶然出会う能力」。科学上の新発見とか恋人との出逢いとか、セレンディピティは様々な人生の局面で意味を持つ概念。
セレンディピティを活かすには「行動」「気づき」「観察」「受容」「理解」「実現」が欠かせない。まずは「行動」を起こさなくてはセレンディピティを得ることが出来ない。そしてセレンディピティに会ったときに「気づき」、それを「観察」する必要がある。また、感情の問題としても対象との出逢いを「受容」することが大切。そして「理解」することで知の体系の中に位置づけ、血肉にすることができる。最後に他人に説明したり説得したりして社会に広げていくプロセス(「実現」)があって完成する。《ひらめきp.168》

■知・情・意(知識・感情・意識)の処理
「知」は「知識」の知であり、「情」は「感情」の情であるが、自分にとって良いものか悪いものかという情報の意味や価値も含まれている。知は情報を処理するだけだが、情は処理された情報に価値を与えるという面がある。「意」は「意識」の意であり、知や情とは全く異なっていて、知や情に働きかけるもの。知は大脳の後半部、情は大脳辺縁系、意は前頭葉とつかさどる場所が脳の中で割り振られている。《ニュートンp.116》

■記憶をコントロールする海馬
海馬は「記憶を蓄える」場所ではなく、「記憶を作る」場所。海馬は物事を学習することで増殖。新しく生まれた神経は、覚えた記憶が脳内にとどまっている期間は生き延び続ける。記憶テストの成績が良かった場合ほど、多くの神経が新たに生まれていた。《脳はなにかとp.18》
初めての場所を訪れるとき、脳が周囲の風景に注意を巡らせると海馬の神経が激しく活動。この活動は「集中力」に強く左右される。「仕事の出来るやつ」かどうかは好奇心や注意力が重要なファクター。《脳はなにかとp.111》
脳の記憶には「獲得」「固定」「再生」「最固定化」の4ステップがあり、海馬は「固定」するまでのプロセスをになっている。《脳はなにかとp.250》

■ストレスへの順応を可能にする海馬
「現在の環境をストレスに感じる必要はない」と脳が記憶し、ストレスを克服する。海馬が活性化すればするほど、ストレスへの順応が早くなり、「状況に応じて感じる」恐怖記憶に蓋をする。例)場馴れ《脳はなにかとp.35》
海馬を段階を踏んで発達させることで、次第に強いストレスに打ち克つようになる。《脳はなにかとp.37》

■脳を感受性の高い状態に保つシータ(θ)波
シータ波が出ているときに学習をすれば、年を取っても若い脳と同じだけの性能を発揮できる。シータ波は知的好奇心を持っていたり探索心を持っているなど注意力や興味に関係する。《脳はなにかとp.220》
海馬にシナプス可塑性(神経信号の通りが良くなったり悪くなったりする変化)を引き起こすにはシナプスを強く、しかも繰り返し活動させることが重要。一秒間に5回ぐらいのシータ波のリズムでシナプスを刺激すると可塑性が起こりやすい。《脳はなにかとp.215》

■空腹になると海馬が鍛えられる
空腹は危機的な状態であり、消化管ホルモンのグレリンが放出され、海馬に届く。するとシナプスの数が30%も増え、シナプス活動の変化率が増大する。《脳はなにかとp.242》

■海馬の細胞の増殖法
1.マンネリを避けて刺激ある日常生活を心がける
2.適度のランニング
3.食べ物をよくかむ
4.社交の場に積極的に出る
5.ストレスを避ける
6.(幼児の場合)母親からの愛情をふんだんに受ける
7.社会の現場で優位な対人関係にいる
《脳はなにかとp.20》

■扁桃体と恐怖
「何かのきっかけで感じる」恐怖(ストレッサー)を記憶する。《脳はなにかとp.35》
扁桃体そのものには感情はなく、クオリアは存在しない。扁桃体が活動してその情報が大脳皮質に送られると、そこではじめて「こわい」という感情が生まれる。動物は「こわいから逃げる」のではなく、「こわい」かどうかは無関係に、単に扁桃体が活動したから避ける。《進化しすぎた脳(池谷裕二/朝日出版社)p.191》
以前経験した恐怖に基づき「無意識で」瞬間的な防衛反応を引き起こす。《『心脳マーケティング』(ジェラルド・ザルトマン/ダイヤモンド社)p.79》
この「こわい」という恐怖感が生命を維持するうえで重要。なぜなら①それが生命を脅かす物だと察知、感知して素早く身を守る②そういう危険な状況に再び陥らないように記憶し、次回の危険を未然に防ぐ。《脳はなにかとp.49》

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2006年09月30日

「脳について解明されていること」レポート(第1回)

ザルトマン教授の『心脳マーケティング』(ダイヤモンド社)は出版されたときショックを受けました。とにかく新しかった。マーケティングに脳神経科学を用いたのは、この本が初めてでした。
少し時は過ぎ、今や米国では「神経経済学」「ニューロエコノミクス」が登場し、マーケティングの分野にも「ニューロマーケティング」というカテゴリーが出てきたそうです。

私の師匠である村山涼一氏は「シニフィエ(意味性)マーケティング」というものに取り組み始めましたが、これからはそういった「哲学系マーケティング」と「脳神経系マーケティング」の両極が注目を集めていくものと思われます。

私は両方の分野に関して研究を進めていますが、「脳」に関しての知見をまとめたレポートが最近上がりましたので、これから数回にわけてご紹介したいと思います。このレポートは、高校の後輩であるOさんが、私の依頼でまとめてくれたものです。相当な力作で、脳に関して今現在わかっていることをうまくまとめてくれていますので、お楽しみください。とはいえ、第1回目はちとたるいかな?(笑)

第1回 脳の構造と各部位の基本的な役割

■脳の構造
脳は細かなモジュールに分けられ、部分部分が独自の動きをする。モジュールは「大脳」「小脳」「脳幹」に分かれる。
成人男性で1350グラム、女性で1250グラム程度だが、エネルギー消費量は1日500キロカロリーと全体重の約半分を占める筋肉と同じ量のエネルギーを必要とする。しかもブドウ糖しかエネルギー源には使わない。《『目からウロコの脳科学』(富永裕久著/PHPエディターズグループ )p.114》

■大脳の働き
大脳は左右に2つあり、その働きによって「大脳皮質」「大脳辺縁系」「大脳基底核」に分かれる。《目からウロコp.116》
<大脳皮質>
大脳皮質は、大脳表面の、いわゆる“脳のしわ”のある部分で、厚さは2~3ミリメートル。人間の脳の中では、もっとも大きな部分であり、かつ、人間を人間たらしめる部分でもある。
大脳皮質は「前頭葉」「頭頂葉」「側頭葉」「後頭葉」に分かれる。各領域はそれぞれ次のような重要な役割を持っている。
前頭葉…思考や学習、推論といった高度な精神的機能や体の動きを担当
頭頂葉…空間認識や触覚などの感覚を担当。また、知覚入力に対する応答を調節する部位。すなわち体に刺激を受けたときに痛いとか、熱いなどと感じ、それを筋肉に送り運動を制御する働きを持つ
側頭葉…顔や形の認知や聴覚、味覚などを担う。視覚や聴覚で受けたものの区別、記憶する部位であり、海馬に保存された記憶を理解する役目を担う部位
後頭葉…主に視覚に関わってくる
《目からウロコp.116》《『ニュートンここまで解明された脳と心のしくみ』(ニュートンプレス):p.150》《『面白いほどよくわかる脳のしくみ』(高島明彦/日本文芸社):p.27》

<大脳辺縁系>
大脳辺縁系は、左右の大脳をつないでいる脳梁を取り巻くように配置されている。大脳皮質が新皮質といわれるのに対して、大脳辺縁系は旧い皮質といわれ、「動物の脳」ともいわれる。
大脳辺縁系に含まれるモジュールには「扁桃体(扁桃核)」「帯状回」「海馬」「脳弓」「中隔核」などがあり、次のような役割を持っている。
扁桃体…本能的な快・不快を感じる部分
帯状回…大脳皮質の知覚に位置し、扁桃体からの快や不快、また視床下部からの欲求などを取りまとめて大脳皮質に伝える。この働きこそが、人が何かをなすときの意欲につながる。
海馬…記憶に関わっている
《目からウロコp.118》

<大脳基底核>
大脳基底核は、大脳辺縁系のさらに下にある。さらにその下の小脳とともに、運動に関連した中枢で、「尾状核」「視床下核」「黒質」「被殻」「淡蒼球」からなる。これらはいずれも神経細胞の塊であり、ネットワークを組むことで、体がスムーズに動くように調節する役割を持っている。《目からウロコp.120》
尾状核と被殻…大脳の運動野からの情報を受け取り、姿勢を保ったり、筋肉の緊張弛緩を調節したりしている
淡蒼球…尾状核や被殻の情報を視床に伝える
黒質…視床や尾状核、被殻などに情報を送り出す役目
視床下核…淡蒼球と黒質との情報のやりとりを担っている
《面白いp.26》

■脳幹の働き
脳幹は「視床」「視床下部」「脳下垂体」「中脳」「橋」「延髄」というモジュールで構成される。さらに脊髄に連結し、そこから全身へ情報を送る。つまり、大脳や小脳が発する情報を全身に送ったり、全身から集まった感覚の情報を大脳に伝えるのが脳幹の働き。それぞれのモジュールの働きは以下の通り。
視床…視覚神経や聴覚、味覚といった感覚情報の中継点
視床下部…視床の下にある「視床下部」は重さ10グラムほどではあるが、生命中枢と呼ばれるほど重要な役割をする。たとえば、空腹を感じさせて食事を促す摂食中枢や、逆に食べるのをストップさせる満腹中枢など。このほか、性欲や内臓の働き、体温調節、血圧調節など全身をさまざまな形でコントロールする
脳下垂体…視床下部のさらに下にある「脳下垂体」視床下部の命令を受けて、全身に号令をかける器官である。ここには10種類ものホルモンが蓄えられ、必要に応じてこれを分泌する。人体が常に適正な状態に保たれているのは、視床下部と脳下垂体に寄るところが大きい。
中脳…眼や視覚に関わる中枢。光に対する同行の開閉や、目の焦点の調節を担う。また、歩行などの運動をコントロールするのも中脳の働きを持つ。
橋…大脳や小脳と末梢神経をつなぎ、全身の筋肉を制御。
延髄…呼吸や心拍数の調節をする機能や反射に関わる中枢
《目からウロコp.122》

■小脳の働き
小脳は身体位置の把握を始め、無意識に行われるものが多く、たとえばまっすぐ歩くための方向感覚や、体をスムーズに動かす調整などを担う。また、自転車やスキーなどの「技の記憶」も小脳の働き。
《目からウロコp.124》

■体性感覚野と運動野
カナダの脳外科医ペンフィールドによって、運動の指令を全身に送る運動野と、全身の皮膚感覚を認識する体性感覚野が発見された。《目からウロコp.128》
手と顔が異様に大きいが、実際手や顔はかなり複雑に動かすことが出来るが、背中やおなかなどは動かし方のバリエーションが少ない。たとえば、2本の爪楊枝で2センチメートルくらい離して、皮膚を軽く刺激した場合、唇なら2点に刺激を受けていることがすぐに分かるが、背中などでは、1点と2点との区別は付かない。また、隣り合っている部位は、ある種の取り違えも起こりうる。
《目からウロコp.128》

■運動連合野
運動野だけの働きだけではロボットのように手足を順番に動かすにすぎない。この運動野に、次々と命令を出し、流れるようなスムーズな運動をさせるのが「運動連合野」である。たとえばボールを蹴ろうとするとき、「右足と左足をリズミカルに前に出してボールまで走り、左足を軸足にして、右足で蹴る」という一連の動きのプログラミングをする。
また、運動連合野は「運動前野」と「補足運動野」に分かれる。両方とも細かい機能は分からないことが多い。ただ「運動前野」を損傷すると器用な運動が出来なくなり、「補足運動野」を損傷すると意識や知能は正常だが、体を動かしたり言葉を発したがらなくなったり意識とは無関係の動作をしたりすることがある。
身体の運動には、大脳皮質以外にも、大脳基底核が筋肉のスムーズな動きや姿勢の調整行ったり、小脳が大脳による運動の命令と実際の動きを常にモニターし、無意識のうちにそのずれを修正している。《目からウロコp.130》

■感覚野と連合野
ペンフィールドによって確かめられた体性感覚野は皮膚感覚や深部感覚を認識する。皮膚感覚とは、圧覚(触覚)、痛覚(痛み)、温覚(熱さ)、冷覚(冷たさ)のことである。一方、深部感覚とは、手足の関節や筋肉の痛みといった感覚である。
人間にはこのほかにも様々な感覚があり、視覚、聴覚、味覚、嗅覚であり、大脳皮質にはこれらの感覚を担当する領域がそれぞれある。
たとえば視覚野は後頭葉にある。視覚野で色や形、動きや奥行きによって分類された視覚情報は、脳の様々な領域に振り分けられる。代表的な例として「頭頂連合野」「側頭連合野」「後頭連合野」の働きをみる。視覚情報は、これらの各連合野でさまざまな処理が行われ、正確かつ多面的に見ているものを認識できる。
頭頂連合野…見ている物体の行程や遠近などの情報が送られてくる。と同時に体性感覚野から自分の身体の大きさなどの情報も入ってくる。これらを総合して空間の広さとか物体までの距離などを判断する。
側頭連合野…見たものが何であるかという認識や判断が行われる。人の顔の認知などのパターン認識や、色の判断も行われる。
後頭連合野…見たものの名前を特定する機能を持つ。
《目からウロコp.132》

■ニューロンとグリア細胞
脳をつくる細胞はニューロン(神経細胞)とグリア細胞の2種類有る。ニューロンはあちこちに枝を伸ばしている中心の星系の部分が神経細胞体で、核を1つ持つ。伸びている枝は1本だけある長いものが軸索(神経繊維)で、他のニューロンに情報を伝達する。一方上下左右に広がる短いものは樹状突起と呼ばれ、情報を受け取る役目を果たす。大脳の中にはこういうニューロンが約1400億個もあり、1つのニューロンの神経繊維が、他のニューロンの樹状突起へと伸び、そこで結合する。この結合部分はシナプスと呼ばれ、1つのニューロンに平均1万個あると言われている。
グリア細胞は脳の各所で様々な役割があり、たとえば血管とニューロンの間に入り、血液中のブドウ糖をニューロンに送ったりニューロンが出した老廃物や死んだニューロンを処理する。またニューロンの軸索を絶縁して、ニューロンが発する電気信号を漏らさない働きをするものもいる。
《目からウロコp.138》

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