「脳について解明されていること」レポート(第1回)

ザルトマン教授の『心脳マーケティング』(ダイヤモンド社)は出版されたときショックを受けました。とにかく新しかった。マーケティングに脳神経科学を用いたのは、この本が初めてでした。
少し時は過ぎ、今や米国では「神経経済学」「ニューロエコノミクス」が登場し、マーケティングの分野にも「ニューロマーケティング」というカテゴリーが出てきたそうです。

私の師匠である村山涼一氏は「シニフィエ(意味性)マーケティング」というものに取り組み始めましたが、これからはそういった「哲学系マーケティング」と「脳神経系マーケティング」の両極が注目を集めていくものと思われます。

私は両方の分野に関して研究を進めていますが、「脳」に関しての知見をまとめたレポートが最近上がりましたので、これから数回にわけてご紹介したいと思います。このレポートは、高校の後輩であるOさんが、私の依頼でまとめてくれたものです。相当な力作で、脳に関して今現在わかっていることをうまくまとめてくれていますので、お楽しみください。とはいえ、第1回目はちとたるいかな?(笑)

第1回 脳の構造と各部位の基本的な役割

■脳の構造
脳は細かなモジュールに分けられ、部分部分が独自の動きをする。モジュールは「大脳」「小脳」「脳幹」に分かれる。
成人男性で1350グラム、女性で1250グラム程度だが、エネルギー消費量は1日500キロカロリーと全体重の約半分を占める筋肉と同じ量のエネルギーを必要とする。しかもブドウ糖しかエネルギー源には使わない。《『目からウロコの脳科学』(富永裕久著/PHPエディターズグループ )p.114》

■大脳の働き
大脳は左右に2つあり、その働きによって「大脳皮質」「大脳辺縁系」「大脳基底核」に分かれる。《目からウロコp.116》
<大脳皮質>
大脳皮質は、大脳表面の、いわゆる“脳のしわ”のある部分で、厚さは2~3ミリメートル。人間の脳の中では、もっとも大きな部分であり、かつ、人間を人間たらしめる部分でもある。
大脳皮質は「前頭葉」「頭頂葉」「側頭葉」「後頭葉」に分かれる。各領域はそれぞれ次のような重要な役割を持っている。
前頭葉…思考や学習、推論といった高度な精神的機能や体の動きを担当
頭頂葉…空間認識や触覚などの感覚を担当。また、知覚入力に対する応答を調節する部位。すなわち体に刺激を受けたときに痛いとか、熱いなどと感じ、それを筋肉に送り運動を制御する働きを持つ
側頭葉…顔や形の認知や聴覚、味覚などを担う。視覚や聴覚で受けたものの区別、記憶する部位であり、海馬に保存された記憶を理解する役目を担う部位
後頭葉…主に視覚に関わってくる
《目からウロコp.116》《『ニュートンここまで解明された脳と心のしくみ』(ニュートンプレス):p.150》《『面白いほどよくわかる脳のしくみ』(高島明彦/日本文芸社):p.27》

<大脳辺縁系>
大脳辺縁系は、左右の大脳をつないでいる脳梁を取り巻くように配置されている。大脳皮質が新皮質といわれるのに対して、大脳辺縁系は旧い皮質といわれ、「動物の脳」ともいわれる。
大脳辺縁系に含まれるモジュールには「扁桃体(扁桃核)」「帯状回」「海馬」「脳弓」「中隔核」などがあり、次のような役割を持っている。
扁桃体…本能的な快・不快を感じる部分
帯状回…大脳皮質の知覚に位置し、扁桃体からの快や不快、また視床下部からの欲求などを取りまとめて大脳皮質に伝える。この働きこそが、人が何かをなすときの意欲につながる。
海馬…記憶に関わっている
《目からウロコp.118》

<大脳基底核>
大脳基底核は、大脳辺縁系のさらに下にある。さらにその下の小脳とともに、運動に関連した中枢で、「尾状核」「視床下核」「黒質」「被殻」「淡蒼球」からなる。これらはいずれも神経細胞の塊であり、ネットワークを組むことで、体がスムーズに動くように調節する役割を持っている。《目からウロコp.120》
尾状核と被殻…大脳の運動野からの情報を受け取り、姿勢を保ったり、筋肉の緊張弛緩を調節したりしている
淡蒼球…尾状核や被殻の情報を視床に伝える
黒質…視床や尾状核、被殻などに情報を送り出す役目
視床下核…淡蒼球と黒質との情報のやりとりを担っている
《面白いp.26》

■脳幹の働き
脳幹は「視床」「視床下部」「脳下垂体」「中脳」「橋」「延髄」というモジュールで構成される。さらに脊髄に連結し、そこから全身へ情報を送る。つまり、大脳や小脳が発する情報を全身に送ったり、全身から集まった感覚の情報を大脳に伝えるのが脳幹の働き。それぞれのモジュールの働きは以下の通り。
視床…視覚神経や聴覚、味覚といった感覚情報の中継点
視床下部…視床の下にある「視床下部」は重さ10グラムほどではあるが、生命中枢と呼ばれるほど重要な役割をする。たとえば、空腹を感じさせて食事を促す摂食中枢や、逆に食べるのをストップさせる満腹中枢など。このほか、性欲や内臓の働き、体温調節、血圧調節など全身をさまざまな形でコントロールする
脳下垂体…視床下部のさらに下にある「脳下垂体」視床下部の命令を受けて、全身に号令をかける器官である。ここには10種類ものホルモンが蓄えられ、必要に応じてこれを分泌する。人体が常に適正な状態に保たれているのは、視床下部と脳下垂体に寄るところが大きい。
中脳…眼や視覚に関わる中枢。光に対する同行の開閉や、目の焦点の調節を担う。また、歩行などの運動をコントロールするのも中脳の働きを持つ。
橋…大脳や小脳と末梢神経をつなぎ、全身の筋肉を制御。
延髄…呼吸や心拍数の調節をする機能や反射に関わる中枢
《目からウロコp.122》

■小脳の働き
小脳は身体位置の把握を始め、無意識に行われるものが多く、たとえばまっすぐ歩くための方向感覚や、体をスムーズに動かす調整などを担う。また、自転車やスキーなどの「技の記憶」も小脳の働き。
《目からウロコp.124》

■体性感覚野と運動野
カナダの脳外科医ペンフィールドによって、運動の指令を全身に送る運動野と、全身の皮膚感覚を認識する体性感覚野が発見された。《目からウロコp.128》
手と顔が異様に大きいが、実際手や顔はかなり複雑に動かすことが出来るが、背中やおなかなどは動かし方のバリエーションが少ない。たとえば、2本の爪楊枝で2センチメートルくらい離して、皮膚を軽く刺激した場合、唇なら2点に刺激を受けていることがすぐに分かるが、背中などでは、1点と2点との区別は付かない。また、隣り合っている部位は、ある種の取り違えも起こりうる。
《目からウロコp.128》

■運動連合野
運動野だけの働きだけではロボットのように手足を順番に動かすにすぎない。この運動野に、次々と命令を出し、流れるようなスムーズな運動をさせるのが「運動連合野」である。たとえばボールを蹴ろうとするとき、「右足と左足をリズミカルに前に出してボールまで走り、左足を軸足にして、右足で蹴る」という一連の動きのプログラミングをする。
また、運動連合野は「運動前野」と「補足運動野」に分かれる。両方とも細かい機能は分からないことが多い。ただ「運動前野」を損傷すると器用な運動が出来なくなり、「補足運動野」を損傷すると意識や知能は正常だが、体を動かしたり言葉を発したがらなくなったり意識とは無関係の動作をしたりすることがある。
身体の運動には、大脳皮質以外にも、大脳基底核が筋肉のスムーズな動きや姿勢の調整行ったり、小脳が大脳による運動の命令と実際の動きを常にモニターし、無意識のうちにそのずれを修正している。《目からウロコp.130》

■感覚野と連合野
ペンフィールドによって確かめられた体性感覚野は皮膚感覚や深部感覚を認識する。皮膚感覚とは、圧覚(触覚)、痛覚(痛み)、温覚(熱さ)、冷覚(冷たさ)のことである。一方、深部感覚とは、手足の関節や筋肉の痛みといった感覚である。
人間にはこのほかにも様々な感覚があり、視覚、聴覚、味覚、嗅覚であり、大脳皮質にはこれらの感覚を担当する領域がそれぞれある。
たとえば視覚野は後頭葉にある。視覚野で色や形、動きや奥行きによって分類された視覚情報は、脳の様々な領域に振り分けられる。代表的な例として「頭頂連合野」「側頭連合野」「後頭連合野」の働きをみる。視覚情報は、これらの各連合野でさまざまな処理が行われ、正確かつ多面的に見ているものを認識できる。
頭頂連合野…見ている物体の行程や遠近などの情報が送られてくる。と同時に体性感覚野から自分の身体の大きさなどの情報も入ってくる。これらを総合して空間の広さとか物体までの距離などを判断する。
側頭連合野…見たものが何であるかという認識や判断が行われる。人の顔の認知などのパターン認識や、色の判断も行われる。
後頭連合野…見たものの名前を特定する機能を持つ。
《目からウロコp.132》

■ニューロンとグリア細胞
脳をつくる細胞はニューロン(神経細胞)とグリア細胞の2種類有る。ニューロンはあちこちに枝を伸ばしている中心の星系の部分が神経細胞体で、核を1つ持つ。伸びている枝は1本だけある長いものが軸索(神経繊維)で、他のニューロンに情報を伝達する。一方上下左右に広がる短いものは樹状突起と呼ばれ、情報を受け取る役目を果たす。大脳の中にはこういうニューロンが約1400億個もあり、1つのニューロンの神経繊維が、他のニューロンの樹状突起へと伸び、そこで結合する。この結合部分はシナプスと呼ばれ、1つのニューロンに平均1万個あると言われている。
グリア細胞は脳の各所で様々な役割があり、たとえば血管とニューロンの間に入り、血液中のブドウ糖をニューロンに送ったりニューロンが出した老廃物や死んだニューロンを処理する。またニューロンの軸索を絶縁して、ニューロンが発する電気信号を漏らさない働きをするものもいる。
《目からウロコp.138》

Posted by simfarm at 2006年09月30日 21:02

Comments

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Posted by Albert Brazier | 2007年08月08日 17:04

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