「脳について解明されていること」レポート(第2回)

第2回目は「大脳」です。「大脳」は面白いですよ。より興味のある方は、参考文献をご覧になってください。どの本も読んでおいて損はないですから(^-^)。

第2回 大脳に関して分かっていること

■大脳皮質の機能を抑制するアルコール
大脳皮質の働きの一つは「理性」を生むことである。理性の働きは本能を抑制することである。理性は、利己欲や性欲などを抑制することで、ヒトを社会的な動物に作りあげる。大脳皮質は、アルコールによって比較的効率よく抑制される。飲むと笑い上戸になったり、泣き上戸になったりなど、隠れていた本能や本性が表れてきたと見なすことが出来る。《『脳はなにかと言い訳する』(池谷裕二/祥伝社)p.80》

■他人の痛みを感知する「同情ニューロン」
ロンドン大学のシンガー博士は、苦痛を感じるときの脳の反応の実験で、「視床」や「体性感覚野」など古くから「痛覚の通り道」といわれていた部位だけではなく、「帯状野」や「島皮質」と呼ばれる場所も同時に反応することを発見した。帯状野や島皮質は他人が苦しんでいるのをみて「痛いだろうなあ」とゾワゾワする感覚を生み出している神経。これを「同情ニューロン」と名付けた。これは相手が何をしているかを見て反応する「ミラーニューロン」の延長線上にある。《脳はなにかとp.133》

■前頭葉にあるアラームセンターと司令塔
前頭葉には「ACC(Anterior Cingulate Cortex)」(前部帯状回)という部位があり、脳における「アラームセンター」の役割を果たす。たとえば、痛みを感じたときなど何か尋常でないことが起こると、このACCが最初に反応し活動する。するとその情報は前頭葉側にある「LPFC(Lateral Prefrontal Cortex)」(外側前頭前野)というところに伝わる。このLPFCが脳内の神経細胞の活動のメリハリをつける働きをし、かつACCとの連係プレーでひらめきの種がないか、常に見張っている。《『ひらめき脳』(茂木健一郎/新潮社)p.82》

■前頭葉とモチベーション
我々の行動の基本は、「目標」と「報酬への期待」を関連付けるモチベーションによる。この時、目標を達成すればどれだけ報酬が得られるかという「期待の大きさ」は脳内のどこでどのように表現されているのだろうか?サルに「数段階の試行を正解すると初めて報酬が貰える」という課題を課した。何回正解すると報酬が貰えるかの手がかりを示しながらサルに課題を遂行させると、エラー率は報酬が近づくにつれて小さくなる。これは報酬がもうすぐ貰えるという期待が大きくなっていることを表す。この時、前頭葉内側部の前帯状皮質に報酬への期待の大きさに比例して、反応が強くなる神経細胞がある。《http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2002/pr20020530/pr20020530.html
前頭葉は報酬への期待と仕事の精度の関係に関与。仕事の正確度を高めたければ、多くの行程をひとまとめにせず、ステップに分け、そのたびに報酬を与える。すなわち、大きな仕事を成し遂げるためには、最終目標以外にも、小さな目標、達成可能な目標を随時掲げていくことが大切。《脳はなにかとp.54~58》
モチベーションの維持には、外発的動機付けによって脳の外から動機を与える環境主導型のやり方が一つ。もう一つのやり方は体を実際に動かすことで、やる気がなくても、脳が次第に活性化し、やる気が出てのめり込む「作業興奮」という状態を作る体主導型のやり方がある。《脳はなにかとp.58》

■報酬系とモチベーション
報酬系とは、ヒト・動物の脳において、欲求が満たされたとき、あるいは満たされることが分かったときに活性化し、その個体に快の感覚を与える神経系のことである。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A0%B1%E9%85%AC%E7%B3%BB
中脳の腹側被蓋野などの報酬系という脳部位には、快楽を生み出す神経伝達物質ドーパミンが大量にある。腹側被蓋野に電極を刺したネズミは飲まず食わずで快楽を求める。恋愛感情もこの一つと見られている。《脳はなにかとp.61》
ネズミが「えさを食べた」という情報が腹側被蓋野のニューロンに伝えられると、さらにその情報が軸索を伝わっていく。この軸索は、前脳の「側坐核」というニューロンか集まっている場所までのびている。この軸索の末端まで情報が伝わると、神経伝達物質のドーパミンが放出する。すると、そのドーパミンを側坐核のニューロンが受け取り、快感が得られる。《『ニュートンここまで解明された脳と心のしくみ』(ニュートンプレス)p.97》
報酬系の働きは、学習や環境への適応において重要な役割を果たしている。たとえば我々は、「この仕事を完了したらボーナスがもらえる」などと、長期的な報酬を予測することで、疲労や空腹といった短期的欲求を抑えて仕事を優先できる。しかし当てにしていたボーナスがカットされると、報酬系が抑制され、不快さを感じるのである。また、報酬系神経系の働きが、大脳皮質の可塑性に影響するという報告もあり、学習においても同様に報酬系が重要である。「誉めて育てる」という言葉はこのことを言い得ている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A0%B1%E9%85%AC%E7%B3%BB

■報酬から生まれる創造
恋愛などによって脳内に大量に分泌されるドーパミンは、快楽を与えるとともに意欲や想像力にも深く関係している。ドーパミンの分泌によって刺激を受け、活性化された前頭葉は、性欲や食欲を満たすための行動を欲するとともに、好奇心と意欲を高め、何かを創造しようという方向へ向かう。恋愛中に表情がいきいきと輝いて見えるのは、化粧をしたりファッションに気遣うほか、実はこうした内面の変化も大きく影響している。
通常、脳の神経細胞には過剰なホルモンを受け付けないようオートレセプターといわれる機能が働いている。しかし、前頭連合野に伸びているA10神経という快楽にもっとも深く関与しているこのまわりに限っては、オートレセプターの機能が壊れてしまっている。したがい、過剰にドーパミンが分泌されることになり、人間の脳はどんどん快楽で活性化させられる。《『面白いほどよくわかる脳のしくみ』(高島明彦/日本文芸社)p.144》
他人に注意するのが好きな人がいる。科学は、他人に注意するという人間の行動に、「利他行動」という視点からアプローチする。必ずしも自分の得にならない、むしろ損になるかもしれないのに、他人の利益のために敢えてする、というのが利他行動である。生物は基本的に自己保存の本能に従って行動している。生物学的には利他行動を取ることが、巡り巡ってそのような行動を取る遺伝子の生存、および子孫への継承に有利に働くなら、そのような行動は生き残るというふうに考える。
一方、脳科学の立場では別の視点から解釈が提案されている。利他行動は自分のための行動であるという解釈である。注意するときに、どうやら人間の脳は「快感」を感じているらしい。《『脳の中の人生』(茂木健一郎/中央公論新社)p.94》

■未来予測から不安が生まれる
前頭葉の右半分をなくすと悩みが消える。悩まなくなると社会に適応しながら生活できない。悩まない人たちは、記憶力が低下する。そもそも記憶というのは、未来の自分のためにある。未来への計画性のないヒトにとっては、記憶は不要である。不安は生命力の肥やしになっていて、生活基準の重要なカテゴリーである。《脳はなにかとp.265》

■不確実性とひらめき
ある程度は予測できるが、どうなるか分からない側面もあるという性質を「偶有性」と呼ぶ。人間の脳において、この不確実であることに対処するため最も重要な働きをするのは、感情である。たとえば試験前にうまくいくかどうか分からないと不安になったり、危険に直面するとテンションが上がったりする。すなわち不確実性は感情を活性化させる。
感情の中枢は、「は虫類の脳」と言われる大脳辺縁系であり、理性を司る大脳皮質が感情を抑えることによって人間は社会的生活を送れると考えられてきた。しかし、最近では、感情は理性にコントロールされているのではなく、むしろ理性を支えていると考えられるようになった。
人生は偶有性に満ちており、正解は何も保証されていない。いつか決断し行動にしなくてはならない。そのときに背中を押す直感を支えるのが、脳における感情のシステムである。ひらめきも不確実性という背景から生まれる。全てが確定した状況にあるならば、ひらめきは不要である。《ひらめきp.139》

■不確実性と報酬
飲料が並んでいる棚の前で、消費者がどれを買うか選択するのに費やす時間は約2秒。何を買ったらいいのか本当は正確に分からない。消費行動はそのような不確実性の海野中で揺れ動き、メーカーの業績や経済構造にまで影響している。
適切な文脈における不確実性の下での人々の判断、行動は、それ自体が脳にとってうれしいこと(報酬)になりうる、という発見があった。人間とはまさに、未知の可能性に賭けずにはいられない動物。《ひらめきp.148》
ドーパミン細胞の活動は50%の確率で報酬がもらえるときに、特徴的な活動がみられることがわかった。すなわち、刺激が提示されてから報酬が与えられるまで、ドーパミン細胞がだらだらと継続的な活動をすることがわかった。《『脳と創造性』(茂木健一郎/PHP研究所)p.85》

■報酬としてのアイ・コンタクト
他人とのアイ・コンタクトが脳に報酬を与えるという研究の発表があった。ただし、1分も2分も見続けられていたら、むしろ不安や不気味に感じる。相手の方を見たときに、相手もこちらを見ていたり、別の時には目を伏せていたりとか、そのような偶有性に満ちたアイ・コンタクトが脳の報酬となり、感情を活性化させる。《ひらめきp.156》

■セレンディピティ
セレンディピティとは、「思わぬ幸運に偶然出会う能力」。科学上の新発見とか恋人との出逢いとか、セレンディピティは様々な人生の局面で意味を持つ概念。
セレンディピティを活かすには「行動」「気づき」「観察」「受容」「理解」「実現」が欠かせない。まずは「行動」を起こさなくてはセレンディピティを得ることが出来ない。そしてセレンディピティに会ったときに「気づき」、それを「観察」する必要がある。また、感情の問題としても対象との出逢いを「受容」することが大切。そして「理解」することで知の体系の中に位置づけ、血肉にすることができる。最後に他人に説明したり説得したりして社会に広げていくプロセス(「実現」)があって完成する。《ひらめきp.168》

■知・情・意(知識・感情・意識)の処理
「知」は「知識」の知であり、「情」は「感情」の情であるが、自分にとって良いものか悪いものかという情報の意味や価値も含まれている。知は情報を処理するだけだが、情は処理された情報に価値を与えるという面がある。「意」は「意識」の意であり、知や情とは全く異なっていて、知や情に働きかけるもの。知は大脳の後半部、情は大脳辺縁系、意は前頭葉とつかさどる場所が脳の中で割り振られている。《ニュートンp.116》

■記憶をコントロールする海馬
海馬は「記憶を蓄える」場所ではなく、「記憶を作る」場所。海馬は物事を学習することで増殖。新しく生まれた神経は、覚えた記憶が脳内にとどまっている期間は生き延び続ける。記憶テストの成績が良かった場合ほど、多くの神経が新たに生まれていた。《脳はなにかとp.18》
初めての場所を訪れるとき、脳が周囲の風景に注意を巡らせると海馬の神経が激しく活動。この活動は「集中力」に強く左右される。「仕事の出来るやつ」かどうかは好奇心や注意力が重要なファクター。《脳はなにかとp.111》
脳の記憶には「獲得」「固定」「再生」「最固定化」の4ステップがあり、海馬は「固定」するまでのプロセスをになっている。《脳はなにかとp.250》

■ストレスへの順応を可能にする海馬
「現在の環境をストレスに感じる必要はない」と脳が記憶し、ストレスを克服する。海馬が活性化すればするほど、ストレスへの順応が早くなり、「状況に応じて感じる」恐怖記憶に蓋をする。例)場馴れ《脳はなにかとp.35》
海馬を段階を踏んで発達させることで、次第に強いストレスに打ち克つようになる。《脳はなにかとp.37》

■脳を感受性の高い状態に保つシータ(θ)波
シータ波が出ているときに学習をすれば、年を取っても若い脳と同じだけの性能を発揮できる。シータ波は知的好奇心を持っていたり探索心を持っているなど注意力や興味に関係する。《脳はなにかとp.220》
海馬にシナプス可塑性(神経信号の通りが良くなったり悪くなったりする変化)を引き起こすにはシナプスを強く、しかも繰り返し活動させることが重要。一秒間に5回ぐらいのシータ波のリズムでシナプスを刺激すると可塑性が起こりやすい。《脳はなにかとp.215》

■空腹になると海馬が鍛えられる
空腹は危機的な状態であり、消化管ホルモンのグレリンが放出され、海馬に届く。するとシナプスの数が30%も増え、シナプス活動の変化率が増大する。《脳はなにかとp.242》

■海馬の細胞の増殖法
1.マンネリを避けて刺激ある日常生活を心がける
2.適度のランニング
3.食べ物をよくかむ
4.社交の場に積極的に出る
5.ストレスを避ける
6.(幼児の場合)母親からの愛情をふんだんに受ける
7.社会の現場で優位な対人関係にいる
《脳はなにかとp.20》

■扁桃体と恐怖
「何かのきっかけで感じる」恐怖(ストレッサー)を記憶する。《脳はなにかとp.35》
扁桃体そのものには感情はなく、クオリアは存在しない。扁桃体が活動してその情報が大脳皮質に送られると、そこではじめて「こわい」という感情が生まれる。動物は「こわいから逃げる」のではなく、「こわい」かどうかは無関係に、単に扁桃体が活動したから避ける。《進化しすぎた脳(池谷裕二/朝日出版社)p.191》
以前経験した恐怖に基づき「無意識で」瞬間的な防衛反応を引き起こす。《『心脳マーケティング』(ジェラルド・ザルトマン/ダイヤモンド社)p.79》
この「こわい」という恐怖感が生命を維持するうえで重要。なぜなら①それが生命を脅かす物だと察知、感知して素早く身を守る②そういう危険な状況に再び陥らないように記憶し、次回の危険を未然に防ぐ。《脳はなにかとp.49》

Posted by simfarm at 2006年10月01日 09:09

Comments

George Clooney urges neighbours at his Italian retreat to fight a planned development in the town...

Posted by Skylar Isom | 2007年06月23日 08:12

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Posted by Jim Froom | 2007年08月08日 17:05

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