これで「脳について解明されていること」レポートも最終回となります。
改めて「この世界の全ては、私たちの脳が作り、脳が消費している」ということに気づかされます。
お気づきかと思いますが、「脳」に関する研究は非常に学際的で、どんどん新たな知見が出てくるエキサイティングな分野です。今後も新しい知見が加わりましたら、その都度UPしていきますのでお楽しみに!
最終回 その他脳についてわかっていること
■抽象的な言葉を生み出す言語
ウェルニケ野は頭頂用と側頭葉と後頭葉の中間当たりで左脳だけにあり、言葉の意味を理解する部位。ウェルニケ失語症とは見ている物は分かるが、言葉がうまく操れない症状。さらに、抽象的なことが考えられなくなってしまう。たとえば「何を飲みたい?」と訊ねても答えるには抽象的なことを考える必要があるので答えられない。「水を飲みたいですか?」と具体的に訊けばきちんと答えられる。つまり言語は、「宇宙の果てはどうなっているんだろうか」とか「自己とは何だろう」とか、そういう具体性から離れた抽象的なものや形而上学的なものを考えるのに重要な役割を果たす。《目からウロコp.182》《進化しすぎp.177》
■自分を維持する「変化盲(変化に気づかないという現象)」
人は「自己維持を守ろうとする本能」のため、最初に言った意見を曲げない。《脳はなにかとp.94》
ギャンブルでの縁起担ぎのような報酬に対する期待感である「期待効用」にも恒常性の維持が働く《脳はなにかとp.128》
■「赤色」は試合の勝率を上げる
色は生物の個体の間のコミュニケーションにおいて、重要なシグナルになっている。様々な生物において赤は、雄の相手に対する優位性を示す色であり、男性ホルモンの一種であるテストステロンのレベルの高さも表すことが知られている。人間においては、怒りは血流を増し皮膚を赤くする。その一方で恐怖を感じると逆に皮膚の色は青くなる。このため「赤」は対決的な状況において、相手に対する優位を表すシグナルになっている可能性がある。自分の対戦相手のユニフォームが赤だと、人間は無意識のうちに自分の方が劣位だと感じ、パフォーマンスが低下する可能性がある《脳の中p.196》《脳はなにかとp.113》
■脳の反応そのものが有効な市場指標
ニューロマーケティング。コカコーラとペプシをブランド名を知らずに飲んだときは「前頭前野」以外に反応は見られなかったが、ブランド名を明かされて飲んだときは「海馬」などの別の部位までが反応。コカコーラの広告戦略が成功していることを裏付ける。《脳はなにかとp.132》
究極的には、脳をスキャンすることにより、マーケティング業者は人の心が商品にどう反応するかをより的確に見極められようになるかもしれない。フォーカスグループ[市場調査のためにサンプリングされた消費者グループ]も役には立つが、消費者が実際にどう行動するかをつねに予測できるわけではない。しかし脳のスキャンを使えば、テストに協力する消費者が、意図的であれ意図せずにであれ、マーケティング担当者を誤った方向に導くことは、より困難になるかもしれない。《http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20050603303.html》
■経済行動における直感とドーパミン
商品やサービスを購入するといった経済行動において私たちはある決まったルールや方程式に従って行動しているのではない。しかし、私たちの実際の行動はある特定の価値のモデルに従って論理的に最適化されたものではない。まさに「直感」で商品を選択している。モノの値段は、あたかも客観的な価値の指標のようにも思われるが、一物一価が常に成り立つわけではない。実際にはマーケットの中でそれぞれの人が抱いた異なる価値が集計された需要と供給の関係から価格が決まる。水の価値にしても砂漠でのどを渇かしている人のコップ一杯の価値と都会の家でお風呂に入っている人とでは異なる。
このような主観的な効用について考えるためには、脳の中の感情のシステムの働き、とりわけドーパミンを放出する神経細胞の働きに着目すればよい。人間のほとんどの欲望は脳によって作り出され、脳によって消費される。
このような私たちの経済行動を理解する上での本質が不確実性にあることを示したのが、2002年にノーベル経済学賞を受賞したカーネマンらの「行動経済学」である。《脳と創造性p.96》
■自由意志と選択は「ゆらぎ」が決めていた
刺激が来たときのたまたま神経細胞がどんな状態だったかで行動が決まる。「ゆらぎ」が多い人ほどアイデアマンであるが、集中力には欠ける。《脳はなにかとp.146》
■メタファーの活用による消費者心理の表出化
メタファーを活用することで無意識にある消費者の重要な思考や感情を表層へ引っ張り出してくることができる。《心脳マーケp.60》
価値を選択する行為は感情と結びついている。感情がそれぞれの選択肢に価値を与え、それによって選択基準が設けられている。このプロセスはほとんど無意識であり、感情に訴えることのないアイデアは記憶されにくく、それゆえ後で思い出すこともない。《心脳マーケp.61》
思考や感情、学習の95%は無意識の心の中で起きている。《心脳マーケp.62》
したがって意識と無意識の両方を包含するメタファーを使うことが有効。《心脳マーケp.63》
■プラシーボ効果
消費者の無意識が商品の機能的便益以上のとても強力な経験を作り出す力を有する。たとえば自 分の好みのブランドであると知りながら商品を消費する場合と、ブラインドテストなどでそうとは知らずに消費する場合に、心の特別な働きがある。特にコモディティ商品のようなものに対してブランドやサービス提供者にロイヤルティを抱く《心脳マーケp.87》
■脳は「そこにない」情報を追加する
消費者自身がブランドに対する思考や感情を生みだし、自分にとって足りない情報を自分で埋め 合わせ、あたかも物理的に存在しているリアルなものとして受け止める。《心脳マーケp.92》
■脳は「そこにある」情報を捨象する
目に見えるはずの一つの認識がもう一方を抑圧する《心脳マーケp.93》
■恐がりはお酒に弱い
脳内で作用するFynという酵素を作る「Fyn遺伝子」。マウスのFyn遺伝子が機能しないようにすると、正常なマウスよりも電気ショックなどをより恐れるようになった。
このFyn遺伝子が機能しないマウス(恐がりマウス)と正常なマウスにアルコールを与えた。すると、正常なマウスは2~3分ほどで起き上がってくるのに対して、恐がりマウスは起き上がるまで10分もかかった。《ニュートンp.99》
■左右脳の個性
左脳は言語や四則計算を、右脳は立体的な図形に関することやイメージで物事を考える役割がある。たとえば、物質の落下やその落下点を考えるとき、左脳は計算で考える。落ち始めたときの速度や重力による加速度、空気抵抗などから、数式を使って算出する。右脳はイメージと感覚で考える。落ち始めをみれば、右脳にはだいたいの軌跡は見当が付く。これらを机上で考えるときも右脳なら数式ではなくグラフを使う。
また、空軍のパイロットは首をわずかに右に傾け、左視野を使って戦闘機を操縦している。一瞬で敵機と友軍期とを見分けなければならない。左視野-右脳(イメージ脳)組の方がこの識別が早い。
右脳と左脳が協力して問題解決に当たるときは、非常に創造性の高い仕事であり、感動的あるいは画期的な結果を生む。たとえば、詩を詠むとき心象風景や情感をイメージするのは右脳、これを受けて韻を踏んだりしながら言葉にするのは左脳の役目である。これがうまく機能して感動的な詩が生まれる。《目からウロコp.200》
以上の他、左右脳は次のような相違点がある。
①左脳は右半身を制御し、右脳は左半身を制御する。
②左脳は「逐次的に」処理し、右脳は「全体的、瞬時に」処理する
左脳は特に要素が一つひとつ順番に出てくるような、連続性のある物事の認識や、動作の順序をコントロールすることを得意としている。また、左脳は一続きになった一連の動作を制御するときにも活動する。左脳によって行われる連続性のある活動としては、話す、他人の言葉を理解する、読む、書くなどの言語活動がある。
対照的に右脳は多くのものを一度にみる、幾何学的な形のそれぞれの部分をみてその意味を理解する、などの活動を専門的に扱う。だから表情を読み取るときには右脳が特に役立つ。
③左脳は「文」を右脳は「文脈」の処理を得意とする
左脳は「何が」話されたかを扱い、右脳は「どのように」話されたか、つまり眼差しや表情やイントネーションによってもたらせる「言葉に寄らない感情的な面」に重点を置いている。
④左脳は「詳細を分析」し、右脳は「大きな全体像」としてとらえる
一般的に左脳は情報の分析を行い、右脳は統合を得意とする。右脳はバラバラの要素を集め、そこから物事の全体像を認識する能力に特に優れている。
《ハイコンセプトp.49》
■性別と脳
よく言われるのが男性が空間認知能力に優れ、女性が言語能力に優れている。男性の脳と女性の脳ではハード自体にいくつかの違いがある。まず大きさは男性の方が平均100グラム大きい。これは体重差であると考えられる。
構造や形をみると、左右の脳をつなぐ脳梁の膨大部が女性の方がずっと太い。したがい右脳と左脳の連絡は女性の方がよいと考えられている。女性脳の脳下垂体は、周期的に生殖腺刺激ホルモンを出すように指令する。これにより月経がある。
視床下部にあるINAH3(前視床下部第三間質核)という神経は男性の方が女性の2倍以上大きい。ここは男性ホルモンであるアンドロゲンに非常に良く反応する部分で、男性の性行動や低い声、体毛の濃さなどに関わりがある。
言語については女性の場合、左脳を基本としながらも右脳でも言語を操れる人が多い。これは女性の脳梁が太く、右脳と左脳が近しいことに由来すると考えられる。実際、脳梁が太い女性ほど言語を流ちょうに操れる。《目からウロコp.206》
海馬についても男女による解剖学的な違いやストレスに対する反応に性差があることが知られている。海馬は記憶の保存や空間的な位置関係の把握にきわめて重要な構造。海馬は男性よりも女性の方が大きく、こうした解剖学的な違いが、目的地にたどり着く能力にも関係している可能性がある。男性は空間的な位置関係や方角、距離を見積もって進む「推測航法」の能力にたけており、女性は目印を頼りに目的地にたどり着くことが多いことが知られている。また、ラットを使っての実験では、雌のラットの海馬は急激なストレスに直面すると働きが悪くなることがあるが、慢性的なストレスにはむしろ雄よりも抵抗力がある。《サイエンスp.20》
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Posted by Bill Anderson | 2007年08月08日 17:02